マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

 昭和人気を博した漫画アニメ『まいっちんぐマチコ先生』が近年、実写映画化・舞台化され、漫画ネット版も発刊。再ブームが起きている。

■『マチコ先生』とは

『まいっちんぐマチコ先生』は、漫画家えびはら氏による日本漫画作品、およびそれを原作としたテレビアニメ。 私立あらま学園の女性教師麻衣マチコとその生徒達が繰り広げるギャグ漫画

毎回のようにマチコ先生パンチラシーン乳房が出るなど性的描写が奔放で、一部PTAによる「抗議する会」もできたことは有名だ。

いたずら男子生徒がスカートはめくるわ、胸はタッチするわ、入浴は覗くわ、衆の面前で全裸にしてしまうわ……なのだが、どんなにひどいに遭ってもマチコは「いや~ん、まいっちんぐ!」と独特のポーズをとる。「いや~ん、まいっちんぐ!」は流行にもなった。

1980年から学習研究社少年漫画誌『少年チャレンジ』で連載がスタートアニメ1981年10月から放映スタート1980年代前半にテレビアニメを中心に人気を博した。

■90年代後半から人気復活

1990年代後半からかつてのファンを中心にリバイバルブームとなり、単行本の再版のみならず新作も発表され、さらにはDVDドラマ実写化もされ、ブームは今も続いている。

2000年代開上映・発売された映画DVDは以下の通り。

2003年3月 ビデオ実写版まいっちんぐマチコ先生』発売

・同年9月 ビデオ実写版まいっちんぐマチコ先生 Let’s学校』発売

2004年10月 映画実写版まいっちんぐマチコ先生 THE MOVIEOH!コスプレ作戦〜』開上映

2005年9月 実写映画『まいっちんぐマチコ!ビギンズ』開上映

2006年2月 実写映画『まいっちんぐマチコ先生 東大受験作戦!!』開上映

2007年2月 DVD実写版まいっちんぐマチコ先生 Go! Go! 庭訪問!!』発売

2008年8月 DVD実写版まいっちんぐマチコ先生 ビバ! モモカちゃん!!』発売

2009年9月 DVD実写版まいっちんぐマチコ先生 無敵おっぱい番長 タイマン勝負で、まいっちんぐ♪』発売

・同年2月 総集篇DVD実写版まいっちんぐマチコ先生 ベストヒット! パレード!!」発売

1980年初期の作品がかくも長く作品にされているのは、支持されているだろう。

■「10年後」を描いた映画も公開

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

ブームに押され、原作えびはら氏の画業45周年を記念して開されたのが映画初恋スケッチ~まいっちんぐマチコ先生~」だ。今年9月8日から渋谷HAMAXシネマにて一週間開・上映され、全日満員御礼となった。

設定は生徒たちが学校卒業した10年後。マチコ先生役は今作が映画演となるグラドル大澤美で、元理科教師女優あすかが演じた。初日舞台挨拶には出演者の他、神村友征監督原作えびはら氏も登壇。

大澤は、「今回はオーディションで決まったのですが、ずっとで願っていたので、決まったときはとにかくうれしかったですね。そして、こんなにたくさんの人に作品を見てもらえたことが本当に幸せです」と喜びをり、「まいっちんぐポーズの前で何度も練習しました」と述べた。

村は、「私は今19歳、10代の私が先生役を務めるのがすごく違和感で、ケンタ(元生徒。38歳)と過ごす時間が多かったのですが、私が先生線で話すのがちょっと…」と違和感を吐露。

えびはら氏は、「きちんとまとまっていて、すごくびっくりしました。いい作品をありがとうございます」とった。

観客のひとりは、「漫画べたらエロは抑え気味ですが、お約束パンチラシーンがあり、大澤さんのパンツが見えて奮してしまいました(笑)」と告白

別の観客は「10年後の設定というのは新鮮で、新地を拓くもの。マチコ先生原作にしたいろいろな形の作品ができていくと思うと今後が楽しみです」という。

■舞台化で人気グラドルも出演

映画だけではない。ブームに乗って、2017年から築地ブディストホールで舞台化も実現した。初回は『舞台版まいっちんぐマチコ先生〜臨学校人魚伝説!そんな事ってアリエル?の巻〜』。

飛ぶを落とす勢いの人気グラドル青山ひかるマチコ先生役を演じ、雑誌やテレビに引っりだこのグラドル柳瀬紀も出演した。

8月1720日にと夕に行われた舞台は連日満席に。 2018年では同じオール5月3日から6日まで上演で、私も鑑賞した。マチコ役は人気グラドル片岡沙耶が演じ、前年に続いて、柳瀬紀も出演。 内容はじつに示唆深いものであった。

■タイムスリップするストーリー

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

上演が始まるのだが、なぜか幕は降りたまま。まずはあらま学園のヘンタイ教師山形男が登場する。そこに、あらま学園のマチコ先生エッチいたずらをするケン太、タマ夫、三の三人組が客席通路から出てきて、みんなでマチコ先生の登場を待つ。

観客も交えて「マチコ先生」と叫ぶと幕が開いて、お待ちかね片岡沙耶さんが演じるマチコ先生が出てくる。舞台では新入生歓迎会が開催されようとしている。しかし新入生として現れたのは表情のない不思議ちゃん系の少女が一人だけ。

企画したケン太たちを「胸をっていいこと」とマチコ先生が励ますと、ケン太たちは「ボイン、タ~ッチ」といってマチコ先生の胸を触り、マチコ先生は「いやーん、まいっちんぐ」と例の所作をする。

すると、舞台では下からが吹きスカートがなびき、会場はわく。 やがておばさん科学者と自称助手が登場。じつは新入生である不思議ちゃんの少女タイムマシンにもなるロボットだった。

挙句にマチコ先生と生徒たち、山形先生コケダルマ校長愛知教頭らが諸共1980年のあらま学園にタイムスリップしてしまうのだった。そこで過去の自分たちや若かりし頃の自分たちの母親と会う……というSFな展開となっていく。

■約40年の変化が明らかに

タイムスリップ先となる1980年は、前述の原作漫画の連載が始まった年である。私が生まれた年だ。

この演劇はセクシーなドタバタコメディでもあるが、1980年2018年とを較することによって、何が喪われたのか、何が進んだのか…ということを追うテーマになっている。

1980年代アイテムとして出てくるのは、スカートの裾が長い不良三人組、子ちゃんカット女子女子生徒の髪形装。懐かしいと感じた方も多かっただろう。

さて、芝居のストーリーだが、最後は「すけべパワー」によって現代に戻ってくるというもの。友情や連帯あり、節度と抑制のきいた性表現であり、軽妙な会話ありで、観ていて飽きることはなかった。そして、この38年間の変化についても考えさせるものであった。

■行きすぎた性表現規制へのアンチテーゼか

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

昭和Wikipedia」と評され、昭和文化に詳しいゲイレポーターにして昭和研究史酒井人さんはマチコ先生懐古ブームを次のように分析する。

昭和は性的表現に寛容な時代でした。ゴールデンタイムであっても、女性バストパンツが映し出され、深夜放送は大人の放送がたくさんあった。子供の頃に、親が寝ている時間帯に起き、音を絞って深夜番組を見て、オカズにしていた男子も多いでしょう。

マチコ先生エッチシーンを見て、性欲に覚めた男性だって多い。しかし、今はコンプライアンスの時代。地上波深夜であっても女性の裸を拝めることがなく、昭和を知る者にとっては、ある種のもの哀しさを覚えるのは当然。

少年誌も当然です。エッチ漫画は一掃され、萌えエッチの作品であっても乳首を描写できない。エッチ全快のマチコ先生が今も支持されるのは、コンプライアンスにがんじがらめにされた現在テレビ漫画誌へのアンチテーゼであり、性表現が寛容だった昭和へのノスタルジーです」

■「#MeToo」運動は行き過ぎ

ハリウッド界で始まったセクシャルハラスメント告発運動#MeToo」との関連を社会哲学に詳しく、政治メッセージを発信する「才女グラドル」として知られるMasaminだ。

「『まいっちんぐマチコ先生』はセクシュアルハラスメントの拡大解釈や『#MeToo』ムーヴメントの暴走社会問題になっている今日、まさに、それらのを溶かす『希望』と『福音』の重奏として観ることができる傑作です。

セクハラはもともと特定の地位や権を利用して女性に性的関係を迫ったり、性的いやがらせをするもの。フランス90年代にできた刑法としての『セクハラ禁止法』はこれら地位利用セクハラを罰するもので、地位を利用して性的関係を迫ること自体が罪とされた。

#MeToo』も本来は、映画プロデューサーという絶対的権を得た者が、女優に対して性的関係や性的嫌がらせをしたものであって、これは地位利用セクハラであって、社会通念上、到底、許されるものではない。

ところがどうしたことか、『#MeToo』追及は暴走し始め、女性の裸やセクシーな姿を描いた芸術にまで標的を定め、攻撃していっている。レースクイーン止に追い込まれる方向になった。

これは、セクハラとは何の関係もなく、守旧フェミニズムによる『女性の性の商品化』批判の復活・焼き直しであり、表現の自由を著しく狭めるものです。

アメリカでは2000年代女性フェミニスト法学者による『ディフェンディング・ポルノグラフィー』(ポット出版が邦訳を刊行)が上され、『性の商品化』批判フェミニズムは理論上、全に論破されたのです。

もしもレースクイーン女性だけだから性の非対称性で許せないというのであれば、ガチガチムキムキ男子の『レースキング』を共演させればいいのであり、女性にとっても、あるいはゲイにとっても、の保養になるでしょうから、そちらのほうが健全です。

性的表現を許さない動きは、かつてはマッカーシズムに顕著に見られ、欧州では米国流の性的ピューリタニズムとして軽蔑のを向けられてきた。

そんな社会状況がある中で、『まいっちんぐマチコ先生』が現代に復活したことはたいへんに意義深いものがあります。『これくらいのスケベは許容可だよね』という潮になることを願っています」

■カーマニアには「マチコファン」多数

最後に『マチコ先生』についてるのは、先的なろう者でトランセクシャル女性芽衣子さんだ。その経験をもとに、全手話やろう者、LGBTへの理解・啓発を促進する講演を行っている。

芽衣子さんはタレント佐藤かよさんを模した痛車佐藤かよ認)の所有者で、カーママニアイベントがあれば、遠くは秋田県まで首都圏から参加するほどの狂である。

日本一のオールジャンルカスタムカー情報誌『カスタムcar2016年10月号はマチコ先生が表を飾り、特別付録として、まいっちんぐマチコ先生特別描き下しステッカーという付録が付いてきました。

70年代から80年代を所有するカーマニアはほぼみんな貼っていますよ。カーマニアにはなぜか、マチコ先生ファンが多い(笑)。じつは私も持っていますが貼っていません。希少レアなのでコレクションとして飾ってあります」

11月10日からは東京・R’sアートコートにて「ミュージカル・まいっちんぐマチコ先生~画業45周年だよマンガ~」が上演される。漫画からアニメ映画、芝居、ミュージカル。『マチコ先生』の快進撃は今後も続きそうだ。

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(取材・文/しらべぇ編集部・及川健二

往年の人気漫画『まいっちんぐマチコ先生』再ブーム 寛容な昭和性表現への懐古か


(出典 news.nicovideo.jp)


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