パワハラセクハラ行為は法律で禁止されているか?」「入社前なら会社は採用内定を自由に取り消すことができるか?」――正解はいずれも「いいえ」だ。

働く人ならぜひ知っておきたい労働関係の法律や制度の知識(ワークルール)について、20代の人の意識が非常に低いことが、日本労働組合総連合会(連合)の調査でわかった。

若い人の半分は「連合」の名前さえ知らない

調査は、2018年11月22日に発表された「20代ワークルールに関する意識・認識調査」。全国の20~29歳の男女1000人を対象にインターネットで実施した。

まず、雇用や給料、働く環境、労働者の保護など基本的な問題を15問のクイズ形式で聞いたところ(=後述)、正解率が一番高かったのが「男性も育休を取得できる」で87%、一番低かったのが「パワハラセクハラ行為は法律で禁止されているか?」でわずか7%だった。連合についても「知っているかどうか」聞くと、活動内容や名称だけも含めて、「知っている」と答えたのは51%だけだった。49%は名前さえ知らなかった。

「働く時に必要な法律や決まりごと(ワークルール)を学習する機会があったか」を聞くと、「あった」が36%、「なかった」が64%で、職場の規模別にみると、中小企業ほど学ぶ機会が少なく、従業員10人未満では「あった」人は23%しかいなかった(1000人以上では48%)。会社の規模によって、ワークルールを学ぶ環境に大きな差があった。

また、「どんなワークルールを知りたいか」を聞くと(複数回答)、やはり「給料に関すること」が最も多く66%、次いで「労働時間」(57%)、「休日・有給休暇」(55%)など。ただ、「育休・介護休業」に関しては男女差が大きく、男性は20%だけだったが、女性は50%と、30ポイントも高くなった。

さて、読者の皆さんはどれだけワークルールを知っているだろうか。J-CAST会社ウォッチ編集部では、連合が調査の際に出した15問のクイズを、改めて連合広報局と企画局による解説を添えて紹介する。

※(  )内は、正解と20代若者の正解率。

学生アルバイトも有給休暇をとれる?

(1)学生アルバイトも労働者なので、労働法で守られる。

(正解・はい、正解率84.2%)

学生アルバイトも労働者だ。労働基準法第9条で、労働者の定義を「職業の種類に問わず...使用される者で賃金を支払われる者」と定めている。当然、労働法で守られる。

(2)パートアルバイトでも条件を満たせば、有給休暇がとれる。

(はい、76.1%)

パートアルバイトも要件(6か月継続勤務している かつ全労働日の8割以上出勤している)を満たせば有給休暇を取ることができる。

(3)入社前であれば会社は採用内定を自由に取り消すことができる。

(いいえ、32.5%)

労働契約法や労働基準法によって、会社は簡単に内定を取り消すことはできない。内定を取り消すためには、社会の常識にかなう納得のできる理由が必要だ。 たとえば、学校を卒業できない、履歴書の不実記載、企業の経営状況の悪化など、内定時に予測できなかった重大な理由だ。

(4)働くことが決まったら、口頭のみの確認ではなく、会社は労働者に働く条件を書面で明示しなければならない。

(はい、80.4%)

働くことが決まったら、口頭のみの確認ではなく、会社は労働者(アルバイトも含む)に働く条件を書面(労働条件通知書)で明示することが決められている。

(5)常時10人以上の従業員がいる会社は必ず会社のルール(=就業規則)を作成し、労働者に周知しなければならない。

(はい、68.9%)

就業規則は会社のルールブックだ。就業規則は常時10人以上の労働者がいる会社は必ず作成し、掲示、書面の交付などの方法で労働者に周知しなければない。

仕事中にお皿を割ったら弁償しないとダメ?

(6)国が賃金の最低額を定め、会社は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

(はい、82.8%)

金額は都道府県ごとに異なり、毎年10月頃に改定される。時給制ではなく、日給制や月給制の場合は、働いた当日や該当月の所定労働時間で割って計算する。

(7)仕事中に割ってしまったお皿代は給料から差し引かれる。

(いいえ、65.6%)

弁償費用などを給料から一方的に差し引くことはできない。わざと割った場合でなければ、労働者が必ずしも弁償する必要はなく、事業運営上のリスクとして会社が一定程度は負担するものだ。

(8)会社が従業員に残業をさせる場合、「時間外・休日労働に関する協定」(36協定)を締結しなければならない。

(はい、75.8%)

「36協定」とは、労働基準法36条に定められている労使間の協定のこと。労働者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する者と会社とのあいだで締結し、会社が労働基準監督署に届け出る必要がある。

(9)36協定で決めれば、何時間も残業させたり、休日も無制限に働かせたりしてもよい。

(いいえ、78.5%)

36協定があるからといって、無限に働かせていいというわけではなく、限度の基準(1カ月45時間・1年間360時間)が設けられている。

(10)会社は女性が妊娠したことを理由に、配置換えや雇い止め、正社員から非正規社員への契約変更を自由に行うことができる。

(いいえ、67.5%)

妊娠・出産、育児・介護休業などを理由とする不利益取り扱いは、法律(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法)で禁止されている。そのようなことを示唆することもハラスメント(マタニティ・ハラスメント=マタハラ)に該当する。

(11)男性でも育児休業(育休)を取得できる。

(はい、87.2%)

育児休業は、子どもが1歳になるまでの一定期間休める制度で、男性・女性労働者ともに取得できる。男性は出産予定日から、女性は産後休業終了後から取得できる。

保育所に入れないなどの理由があれば、1歳6か月まで延長して休むこともできる。さらに1歳6か月に達した時点で保育所に入れないなどの場合は再度申し出ることで、最長2歳まで再延長することもできる。

セクハラを防止する法はあるがパワハラはまだない

(12)パワハラパワーハラスメント)やセクハラ(セクシュアル・ハラスメント)などのハラスメント行為は法律で禁止されている。

(いいえ、7.3%)

パワハラ:職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為。

セクハラ:労働者の意に反する性的な行動が行われ、それを拒否するなどの対応を理由に解雇、降格、減給などの不利益を受けること。または性的な言動が行われることで、職場環境が不快なものとなったため、労働者の能力発揮に悪影響が生じること。

国内法では、事業主などに対して、セクハラ(男女雇用機会均等法)、マタハラ(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法)の防止措置義務は定められている。しかしハラスメント行為そのものを禁止する規定はなく、パワハなどのハラスメント全般を規制する法律もない。

ただ、パワハラについては2018年9月から政府の労働政策審議会雇用環境・均等分科会で議論が始まっている。事業主にパワハラを防止するための雇用管理上の措置義務を法律で義務付けることなどが示されており、12月に報告書がまとめられた。

(13)会社は労働者を自由に解雇できる。

(いいえ、63.6%)

会社は労働基準法や労働契約法により、労働者を簡単に辞めさせることはできない。社会の常識にかなう納得のできる理由がない解雇は無効だ。

(14)会社が反対しても、労働者は退職する自由がある。

(はい、79.7%)

会社が反対しても、労働者には退職する自由がある。労働者から、個人的な事情で退職を申し出ることを「自己都合退職」という。

(15)仕事中にけがをして治療した場合、本人は治療費を負担しなくてもよい。

(はい、58.7%)

労災(労働災害)の認定を受け、補償を受けるためには、業務遂行性(事故などが業務中に発生しているかどうか)と業務起因性(業務に関係あることによって生じた事故)の2つを満たすことが条件だ。実際の労災の申請の手続きは、被災した労働者本人やその家族が行うことができる。また、会社が労働者に代わって申請手続きを進めることもある。なお、労災の認定は、雇用されている使用者ではなく、都道府県労働局・労働基準監督署で行なう。

同様の事故であっても、周りの状況の違いなどで労災と認定されないこともありうる。ただし、労災かどうかにかかわらず、仕事中に事故が発生したときは、使用者や労働組合に報告しつつ(事故によっては、事故報告書や労働者死傷報告書を労働基準監督署に提出)、専門家や都道府県労働局・労働基準監督署など確認することを勧めたい。

なお、連合では、ワークルールについての知識を深めるために、「ワークルール検定」の受験を呼びかけている。(福田和郎)

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(出典 news.nicovideo.jp)


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