韓国のレーダー照射は「危険行為」に該当せず…根深い韓国軍の反日姿勢、日本を仮想敵国化 | ニコニコニュース



 12月20日午後3時頃、能登半島沖の日本海中央部で、海上自衛隊第4航空群(厚木基地)所属のP1哨戒機が韓国の「広開土大王」型駆逐艦(3900トン)から火器管制レーダーの照射を受けたとして、防衛省は「非常に危険な行為」との見解を発表。在ソウル日本大使館は韓国の国防省、外交省に抗議した。韓国側は「遭難した北朝鮮漁船の捜索用にレーダーを使用した」と釈明した。

 アンテナを回転して広い範囲を見張る水上監視レーダーと、目標をひとつに絞って追尾する火器管制(射撃用)レーダーでは、波長も動きも異なるから、韓国の釈明は苦しい。だが、哨戒機が火器管制レーダーの照射を受けることが「非常に危険」と騒ぐほどのことか、と首をかしげざるを得ない。

●冷戦時の激しい威嚇合戦

 冷戦期の米国とソ連の海軍は激しい威嚇と嫌がらせ合戦を日常的に行っていた。米海軍の空母群はウラジオストク前面など、ソ連近海で艦載機の発着訓練をして攻撃力を誇示し、これに対しソ連は駆逐艦などで米空母の針路妨害に努めた。

 空母は艦載機を発着させる際には風上に向かって直進する。だが海上衝突予防法や国際的規則では、2隻の船の針路が交差する場合には相手を右側に見る船が舵を切って衝突を避ける義務がある。ソ連艦は空母の右側から前方を横切るコースをとって空母の針路を変えさせ、艦載機の発着艦を妨害した。

 米国の駆逐艦は「そうはさせない」とソ連艦の前方に割り込もうとし、米ソの軍艦多数が入り乱れて「あおり行為」を繰り返すうち、1967年には日本海で米駆逐艦ウォーカー」がソ連駆逐艦と衝突、70年には地中海で英空母「アークロイヤル」がソ連駆逐艦と衝突した。

 まるで暴走族の抗争事件のような突っ張り合いはエスカレートし、夜間にサーチライトを相手の艦橋に向けて眩惑したり、失明の危険もあるレーザーを当てたり、砲を向けて脅すことも起きた。はてはソ連爆撃機が胴体下面の爆弾倉の扉を開いて米空母の直上を通過することもあった。こんな米ソ海軍の「チキンゲーム」は核戦争のきっかけにもなりかねないため、両国は冷戦たけなわの1972年に「海上事故防止協定」(INCSEA)を結び、英、仏、独、伊、加などもこれに続いた。日本は冷戦終了後の93年10月に同様な内容の「日露海上事故防止協定」を結んだ。

 これらの協定は互いの海軍の監視行動を認めたうえで、衝突防止の方法や、事故の場合の情報交換、危険な行為の禁止を定めている。日露協定の第3条の(6)は艦船が他方の艦船、航空機に対し「砲、ミサイル発射装置、魚雷発射管その他の武器を指向することによる模擬攻撃」を行うこと。「艦船の航行に危険となるおれのある物体を、他方の艦船の方向に発射すること」「他方の艦船の艦橋又は航空機の操縦席を操照灯などで照射すること」「他方の艦船、航空機の乗員、または搭載装備を害するような方法でレーザーを使用すること」「他方の艦船又は航空機に向け危険となるような方法で信号弾を発射すること」などを危険行為として禁じている。

 もしロシア艦が日本の艦船、航空機に対し火器管制レーダーを向けた場合、日露海上事故防止協定では、それは禁止対象になっていないため、日本が抗議しても反論される。一方、そうした協定がまだない中国、韓国に対しては抗議するという変なかたちになってしまう。

 今後、中国、韓国とも海上事故防止のために、禁止とする危険行為を具体的に描いた協定を結ぶことが望ましいが、ロシアとは禁じ合っていない行為を中国、韓国とは互いに禁止とするのは整合性に欠ける。ロシアに対しても火器管制レーダー照射を禁じるように協定改定を持ち掛けても、ロシアは米国はじめ多くの国々と同様な協定を結んでいるから変えるのは困難だろう。

●米ソ海軍は危険視しなかった

 1972年に米ソが結んだ協定は今日の実態にそぐわない点がある。協定で「ミサイル発射装置を指向する」ことを禁じたのは、当時の対空、対艦ミサイルは発射機に装填し、目標の方向に向けて発射するものがほとんどだったからだ。

 だがその後、艦載ミサイルの多くは甲板に埋め込んだ垂直発射機に入れて多数を立てて並べ、まず真上に発射されてから目標に向かうコースをとるものが主流となった。ミサイル発射装置を他国の艦や航空機に「指向」しなくても発射できる現在では、火器管制レーダーの照射に昔よりも敏感にならざるを得ない。

 韓国の「広開土大王」型駆逐艦も、対空ミサイル「シースパロウ」16発を入れた垂直発射機を艦首に装備している。だが垂直発射機は、ミサイルの数だけずらりと並んだハッチを開けなければ発射はできない。火器管制レーダーで相手の艦や航空機を照射し続け、かつ垂直発射機のハッチを開けたなら、攻撃の構えを示す「模擬攻撃」に当たるだろう。もちろんハッチを開けたか否かは近距離でないとわからないが、以前でもミサイル発射機がどちらを向いているかは遠方からはわからなかった。

 米ソ海軍が激しい突っ張り合いをしていた時期には、砲やミサイル発射機を向けることもあったほどだから、当然火器管制レーダーで相手の艦や航空機を照射することは日常的に起きていたはずだ。だが、それが米ソや日露間の海上事故防止協定で「危険行為」として禁止されていないのは、激しい威嚇合戦に慣れた米ソの海軍士官たちにとっては取るに足らない行為で、さして危険とは思わなかったためだろう。

 私も冷戦当時に何度も朝日新聞社機で日本近海のソ連、米軍軍艦に接近したが、米艦の火器管制レーダーのパラボラアンテナが、きちっとこっちに向いて追尾を続けたり、レーダーと連動するソ連艦の高角砲がこちらの行動に合わせて一斉に向いてくるのを見つつ、周辺を飛び回った。身元不明の小型ジェット機が接近すれば相手の軍艦がそうするのも当然で、「なかなかしっかり警戒をしているな」という以上の感覚はなかった。

●「レーダー照射」を口実にイラク攻撃

 日本で火器管制レーダーの照射が「きわめて危険」「戦争寸前」などと騒がれるようになったのは、2013年1月30日に東シナ海で中国のフリゲート「連雲港」(2300トン)が日本の護衛艦「ゆうだち」(6300トン)に火器管制レーダーを照射して以降だ。今回韓国に抗議したのも、5年前の中国との先例を踏襲したものと思われる。それ以前にも海上自衛隊護衛艦や哨戒機は50年以上、日本近海でのソ連等の艦船の行動を監視していたから、火器管制レーダーの照射を受けることは稀ではなかったはずだ。

「ゆうだち」が照射を受けた際にも、当初海上自衛隊は特に重大な事件とは認識していなかった様子だ。小野寺五典防衛大臣が発表したのは6日後の2月5日で、当時一部のメディアからは「海上自衛隊がすぐに防衛省上層部に報告しなかったのはけしからん」との批判も出た。だが、これは騒ぎ立てるほうが素人なのだ。

 当時、沖縄県民に対する浅慮な罵言で解雇された粗忽な元米国外交官が「米軍は火器管制レーダーの照射を受ければただちに反撃する」と述べたことが、日本の保守派政治家メディアに影響し「大変な事件」と思われるようになった。もし火器管制レーダー照射に米軍がただちに反撃していたなら、とっくに米国とソ連の艦隊の海戦が起き、核戦争に発展していただろう。

 米軍は1991年湾岸戦争後、サダム・フセイン政権の転覆をはかり、クルド人の反乱を支援、イラク上空を飛行禁止地帯にすると宣言、イラク領空を常に米軍機が哨戒飛行していた。この際にイラク対空ミサイルの火器管制レーダーが米軍機を照らすと、それを口実に米軍機はただちにレーダーやミサイル発射機を攻撃した。

 米軍機がイラク領空を飛び回って挑発し、相手がそれに乗ればただちに攻撃ができたのは、米軍機が初めから攻撃をしようと計画して、レーダー電波をとらえてその発信源に向かう「HAAM」などのレーダー破壊用ミサイルを搭載していたからだ。平時に軍艦同士が公海上で火器管制レーダーを向けるのとは状況はまったく異なる。解雇された元米外交官は軍事問題に一知半解の知識しかないため「イラクがレーダー照射をしたから攻撃した」との米軍の発表を読んで、それが普遍的な軍事行動の基準と思い違いしたようだ。

●予算確保のために日本を仮想敵にする韓国軍

 実は日本の対空ミサイル部隊も、上空を通る旅客機など民間機を標的代わりにして、火器管制レーダーでそれを追尾する訓練をしていたことを私は知っていた。だが、ミサイルを発射する準備をしていたわけではなく、単にレーダーの訓練をしているだけで、なんの危険もないから記事にはしなかった。

 元航空幕僚長の田母神俊雄氏は最近ツイッターで「火器管制レーダー照射は全く危険ではない」と述べた由だ。同氏は航空自衛隊対空ミサイル「ナイキ」部隊の出身で、自分たちもやっていたから、危険はないことを説明したかったのだろう。

 防衛省がP1哨戒機が火器管制レーダーによる照射、追尾を受けたというのに対し、韓国側は遭難した北朝鮮漁船の救助のため、水上見張りレーダーを使っていた、と主張している。広い範囲を見張る水上レーダーは通常アンテナを回転させるが、火器管制(射撃用)レーダーは移動する目標をとらえて追い続けるし、周波数帯も異なるから、P1が誤った判断をするとは思えない。

 韓国軍、特にその海空軍は、北朝鮮の海空軍が極めて弱体であるため、新鋭装備の導入予算獲得のためには日本を仮想敵にする必要がある。「日本が独島(竹島)を取りに来る」と宣伝し、それに対抗するためヘリ空母は「独島」と名付け、潜水艦導入の際には議会で「日本のシーレーン遮断のため」と説明していた。空中給油機も購入しようとし、米国防総省の担当者が「北朝鮮の奥行きは500キロ程度、なぜ給油機がいるのか」と聞くと「東京攻撃のために必要だ」と答えるなど、公然と日本への敵意を表してきた。東京まで1000キロの空域での制空権確保が目標と公言もしている。

 国際観艦式に招いた自衛艦に旭日の艦旗を掲揚しないよう求めたり、朝鮮半島有事の際の在留日本人の避難に関する交渉にも応じないなど、反日と愛国が混然一体となっている韓国軍にとっては、レーダー照射について日本に「失礼しました」と頭を下げることは面目失墜になるから、否定を続けるだろう。

 日本としては厄介な隣人だが、韓国軍との口論に深入りしても相手が反日姿勢を改めるとは思えず、相手のレベルまで降下した感を内外に与える。常に少し距離を置いてあまり構わないようにするのが得策ではないか、と考える。
(文=田岡俊次/軍事ジャーナリスト

2018年韓国「国軍の日」、ソウルで記念式典(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)


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