魔夜峰央の同名コミックを実写映画化した『翔んで埼玉』(公開中)に、二階堂ふみGACKTら豪華キャスト陣の出演が叶った。実写映画化のオファーを受けて「お前ら、正気か!?」と驚いたという魔夜だが、「GACKTさんがやるなら、この映画は成功する。二階堂さんのお芝居がうまいこともよく知っていた」とキャスティングに大満足の様子。武内英樹監督も「GACKTさんという圧倒的な存在感を持った方が、観客の皆さんに『このお話は虚構なんだ』というサインを発してくれる。だからこそ “虚構の世界”として受け止めてもらえるものになった」と熱っぽく話す。「感性が似ている」と顔を見合わせる魔夜と武内監督に、キャスティングのこだわりをはじめ、映画『翔んで埼玉』の魅力を語り合ってもらった。

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原作は、埼玉への強烈なディスりがバラエティ番組やSNSで近年改めて話題となった同名コミック埼玉県民が東京都民からひどい迫害を受けている世界を舞台に、東京都知事の息子で、東京屈指の名門校の生徒会長である壇ノ浦百美(二階堂)と、見るからに東京都民でありながら、実は埼玉解放戦線のメンバーである麻実麗(GACKT)の出会いを描く。

■ 漫画「翔んで埼玉」を描いたワケ。千葉県民の武内監督は「埼玉ばかりいじられてる!」と嫉妬

埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」というセリフなど、インパクト大の“埼玉ディス”が炸裂する本作。着想のきっかけについて、魔夜は「編集長に『東京に出たい』と相談したら、『じゃあ、所沢にしなさい』と勧められたんです。とても住みやすいところなので、西武線沿線には漫画家がたくさん住んでいたんですね。さらに出版社へのアクセスもいいということで、所沢に住んでみることにしました。すると、すぐそばに編集長が住んでいて。明らかにこれは、監視をするために呼ばれたんだなと気づいた」と苦笑い。「気づいた時には手遅れで、所沢から脱出するのに4年かかりました。埼玉に閉じ込められたことへのリベンジというか、どこかでそういった鬱憤ばらしをしたかったのかもしれないですね(笑)」と明かす。

原作は未完のままで終わっており、映画では原作の“その後”の世界が展開する。魔夜は「その後、横浜に引っ越しましたので、続きは描きませんでした。横浜から所沢をバカにしたら、本当のいじめになっちゃいますから」と未完の理由を話し、「この映画で原作の続きすべてをやってしまっていますから、もう漫画の続編は描けません。しかも、私が描いたとしてもこうなるだろうという展開ですから、映画が完成したことで、漫画は完結。トドメを刺されました(笑)」と最大の賛辞を送る。

千葉県民」だという武内監督は、「コメディでおもしろい映画が作れないかと思って、本屋さんに行ったんです。そこで見つけたのが『翔んで埼玉』。読んだらめちゃくちゃおもしろくて、こんなことやっちゃっていいのかという、怖いもの見たさのようなものもあって。千葉県民としては『埼玉だけこんなにいじられて、悔しい!』と思った」と大きな笑顔。原作の続きとなるストーリーを描くうえで「魔夜先生は、『自由にやってくれていい』とおっしゃってくださって。それがうれしくもあり、プレッシャーでもあった」というが、「なんとか千葉県民を忍び込ませて、埼玉と戦わせたいと思った。千葉への郷土愛に突き動かされて完成した映画です」と“郷土愛”を軸に、物語を考えていったという。

GACKT の“虚構力”にうなる!「GACKTはCGに近い存在」

豪華キャストが集ったことでも話題の本作。映画「テルマエ・ロマエシリーズでは顔の濃いメンバーを揃えて、大成功に導いた武内監督だが「今回は、キャラの濃い人を集めた。魔夜先生の作品を表現するためには、並みのキャスティングでは太刀打ちできない」と告白。魔夜は「『キャストは?』と聞いて、GACKTさんの名前が出てきた時は、のけぞりましたよ。でもすぐに『アリだな』と思いました。GACKTさんが麗役を引き受けてくれたら、この映画は絶対に成功すると思った」とGACKTに期待たっぷり。

「彼はおそらく、“GACKTはこうあるべきだ”と追求している人だと思うんです。美学を求める人物として、非常に興味深いですよね。『翔んで埼玉』は、巨大な虚構作品です。その主要キャラクターである麗は、そこらへんのペラペラのイケメンでは、絶対に演じられない役。その点、GACKTさんは生きている人間というよりは、CGに近い存在です(笑)。だからこそハマった。まさに“がっぷり四つ”のキャスティング」と、観客を“虚構の世界”へと誘う役割を見事に担っているという。

すると武内監督も「まさにそうですね」と同意。「まず、GACKTさんが『この話は虚構なんだ』というサインを発してくれるから、観客の皆さんにも“虚構の世界”として受け止めてもらえる。もしそれがリアルな存在だったら、埼玉県民のなかでも、怒る人が出てきたんじゃないかな」と称え、「実際にご一緒してみると、GACKTさんはものすごく真面目な方で。求められていることをどのように表現しようかと真剣に考えて、さらにそれを越えようとしてくださる。それは驚くほどでしたね。初めて顔合わせをした時に『ダさいたま、くさいたま…』というセリフを言っていただいたいんです。GACKTさんはリズムよく『ダさいたま、くさいたま…』とものすごくせつない表情で言ってくださった。めちゃくちゃおもしろくて、さすがだ!と思いました」と絶賛の声が止まらない。

■ 撮影初日のキスシーンで実感!二階堂ふみの確かな演技力

さらに魔夜と武内監督は、実写化成功の鍵となったのは、GACKT存在感と共に「二階堂ふみの演技力」だと声を揃える。「とりわけ大好きなのが、百美と麗のキスシーン」だという魔夜は、「私が作品を描く上で大事にしているのは、美しいかどうか。麗と百美のキスシーンの美しさは完璧でした。もう大満足。完全に私の描く世界と合致していた」と惚れ惚れ。

武内監督は「キスシーンは撮影初日だったんです。ねらいだったわけではなく、スケジュールの関係だったんですが、あのシーンから始められて本当によかった。百美が恋に落ちる瞬間で、作品のキモとなる場面です。スタッフをはじめみんなが緊張状態のなか、麗にキスをされた百美がすばらしい表情をしてくれました。二階堂さんは本当にすごいですよ。そこでGACKTさんの存在感もたっぷりと感じることができたし、美術、衣装、芝居、すべてがピタッとハマったと思えた」と最高のスタートを切れたという。

武内監督が役者陣に求めたのは「とにかくどマジにやること」だという。「キャストのみんなには『これは大河ドラマなんだ』と言っていました。たとえ『ダさいたま、くさいたま…』というセリフだろうと、熱量を込めて演じ切ってくれと。真面目にやればやるほど、客観的にはおもしろいものになると思っています」とこだわりを語ると、魔夜は「どうでもいい小ネタや、展開もいっぱいあるね。僕は秘境とされる群馬県プテラノドンが飛んでいるシーンが大好きなんだけど、本当に僕が描いてもそうなるだろうという世界なんですよ。やっぱり、監督とは感性が似ているんですよね」と楽しそうに笑っていた。(Movie Walker・取材・文/成田 おり枝)

原作者の魔夜峰央と武内英樹監督がキャスティングのこだわりを明かす!


(出典 news.nicovideo.jp)


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